読むサラダ〜140字小説家の挑戦〜

140字小説家✒︎『Twitter novelist』による新しい文学への挑戦記。文字を使って様々な文学への可能性を追求します。一緒に作品を作りませんか?

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ブログ小説

『100歳』ブログ小説NO.18

100歳 今日はおばあちゃんの100歳の誕生日。 ようやく二十歳になった私ですら、これまで生きてきてたくさんの出来事があった。おばあちゃんはその五倍。凄い。 戦争を経験し、出産し、田畑を頑張り、おじいちゃんを失い、きっとその人生はシワの数以上に様々…

『世界の境界線』ブログ小説NO.17

世界の境界線 懐かしい匂いのする本のページをめくる。指先から紙が離れて、また新しい世界が開く。 1ページ、1ページが僕にとっての冒険。父が子供の頃に熱中した気持ちが世代を超えて僕に伝わった。 背もたれにしている樹木は父が生まれる遥か昔からこの…

『幸せの定義』ブログ小説NO.16

幸せの定義 久しぶりのおばあちゃんの家。仕事が少し落ち着く夏の終わりに私はおばあちゃんの顔を見にくる。 縁側の日差しが相変わらず気持ちいい。 近所の猫もそれを知ってか、おばあちゃんの縁側で勝手にゴロゴロと寝転がる。おばあちゃんはそれを見て微笑…

『命の値段』ブログ小説NO.15

命の値段 「本当に不幸だとしか言いようもありませんが二匹ともかなり特殊な難病です。保険の適用外なので、もしオペをするとなると数百万円はどこの動物病院でもかかるかと…」 優しそうな医師から告げられた厳しい現実。問われる命の値段。 この子たちは姉…

『未来からの手紙』ブログ小説NO.14

未来からの手紙 不意に届いた一通の手紙。 「あれ? 差出人は私?」 何かの間違いだろう。宛先の所に自分の住所を書くなんて私も相当疲れているみたい。大きなため息を一つ吐き、ハサミで封を切った。 「え?」 それは紛れもなく私からの手紙だった。一週間…

『虚ろな刃』ブログ小説NO.13

虚ろな刃 部屋並べられた八つの棺。 処分する方法も見つからず、いつのまにか部屋の大半をそいつらに奪われてしまった。 子どもに関心がないのか、呆れてしまったのか、大荷物を部屋に運び込む俺に両親は目もくれなかった。 仕事も見つからず、ずっと引きこ…

『永遠に続くオレンジ』ブログ小説NO.12

永遠に続くオレンジ あなたは知っているだろうか? 朝と夜のない世界。そういう世界が時空の狭間に存在するということを。 世界地図には載っていない、ほんの小さな島の物語。 昼と夕が混ざり合い、淡いオレンジに染まる幻想的なその島の風景は、見た者の心…

『閃影ギタリスト』ブログ小説NO.11

日が暮れる少し手前。好きなギターの雑誌を読みながら母の帰りを待つ。 いつか手にしてみたい。おもちゃやゲームなんて何もいらない。この雑誌のギタリストみたいに自分の指で弦を弾いてみたい。 赤とんぼが網戸から飛び立つと同時に母が玄関を開ける音がし…

『手のひら 』ブログ小説NO.10

手のひら 少女は生まれつき不思議な力を持っていた。どんな傷でも少女がそこに手を当てると翌日には消えていた。 「ありがとう」 癒えた人々はみんな少女の頭を撫でてそう呟く。それでも少女は笑わなかった。 街角で見つけた瀕死の仔犬に手を当てる。 翼の折…

『凄腕の花火師』ブログ小説NO.9

凄腕の花火師 凄腕の花火師は腕を組み、導火線を見つめる。 ついにこの日が来た。 彼は船の上で独り呟いた。真夏の太陽を反射した湖面が白く光っている。伝説を刻む日にふさわしい天気だと感じた。 真昼間の河川敷に集められた数千人が彼の船を見つめている…

『お湯屋 "天界" 』ブログ小説NO.8

小さな影が水面から沈んでいく。視界の隅で捉えたその違和感は、背筋を凍らすには十分なものだった。 「あなた!!」 砂浜から叫ぶ妻。その表情はランチの準備ができたことを告げるものではない。 息子と娘の3人で楽しんでいたビーチボール。息子のひどいア…

『夜空の箱舟』ブログ小説NO.7

夜空の箱舟 夜空に浮かぶ観覧車は今日も夢を乗せて回る。 その箱型の小さな空間に抱えきれないほどの大きな夢を乗せて。 観覧車は知っている。 乗ってくれるお客さんは前を向いて夢を追いかける人ばかりだと。暗い気持ちでこの箱舟に乗る人はいない。 ある老…

『たった一度の嘘』ブログ小説No.6

たった一度の嘘 人間はいつから嘘という魔法に取り憑かれたのだろう。つきたくない嘘もある。つかなければならない嘘もある。 そんなことは分かっていても、心無い嘘の横行に社会の疲弊は明らかだった。 天界で度重なる協議を行った。社会の秩序を保つために…

『花壇』ブログ小説NO.5

花壇 「あーあ、我が家に素敵な花壇があったらなぁ」 娘はいつもそんな事を言う。 女房は娘が3歳の時にこの世を去った。花を育てるのが好きな女だった。毎日花壇に水をやる姿を作業場から横目で見ていたものだ。 傘職人として男手一つで子育てしてきた俺に…

『閉じることのない傘』ブログ小説NO.4

閉じることのない傘 僕は右手で傘をさす。 傘の下にいつもいるはずの彼女の姿はなく、僕の身体だけが虚しく雨に打たれていた。風がひどく冷たい。 濡れた道路に反射したネオンは、今いる場所を異世界に見せてくれた。現実じゃないのかもしれないと何度も目を…

『禁じられた森』ブログ小説No.3

禁じられた森 病気で親友を亡くした夜、僕は禁じられた森の中に入った。 元々両親のいなかった僕らは家族同然だったんだ。 「ごめんね、先にいなくなってしまうけど」 「そんなこと言うなよ!治してまた一緒に遊ぼうよ」 親友は笑顔でうなずき、そのままそっ…

『星流し』ブログ小説No.2

星流し 旅人たちは空き缶に星屑を集めてまわる。真っ暗な草原ではこの小さな光だけが希望だ。 無くしたプルトップはもう見つからないけれど、代わりに無数の星を拾って缶に入れていく。 星が缶の底に落ちる時のカランという音が心地良い。 缶が星屑で満杯に…

『雨音ピアニスト』ブログ小説No.1

雨音ピアニスト 鳴り止まない雨音。彼女は病室の中で窓ガラスに弾ける音を静かに聴いていた。 思い出される悲しい夏の日。あの日もこんな雨だった。 コンクールの最中、病魔が彼女を襲った。受賞は目前だった。審査員はスタンディングオベーションの準備をし…