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『たった一度の嘘』ブログ小説No.6

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たった一度の嘘

人間はいつから嘘という魔法に取り憑かれたのだろう。つきたくない嘘もある。つかなければならない嘘もある。

 

そんなことは分かっていても、心無い嘘の横行に社会の疲弊は明らかだった。

 

天界で度重なる協議を行った。社会の秩序を保つためには人間の機能を制限することも必要だ。

 

神は人間界を変えるため『生涯で一度しか嘘をつけない』というルールを定めた。


神は興味深かった。

たった一度の嘘を人間がどの場面で使うのか。八百万の神々と天界から真剣に見守った。

 


ある老夫婦。

いつもの散歩で仲良く手を繋いでいた。無駄な延命をやめた夫の寿命は残りわずかだった。


神にはそれが見えていた。

 

「あなた、身体痛くない?」

妻が夫の背中をさすり、退院後初めてそう呟いた。

「あぁ、大丈夫だよ」


優しい夫の嘘に神々の心が震えた。

 

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