虚ろな刃
部屋並べられた八つの棺。
処分する方法も見つからず、いつのまにか部屋の大半をそいつらに奪われてしまった。
子どもに関心がないのか、呆れてしまったのか、大荷物を部屋に運び込む俺に両親は目もくれなかった。
仕事も見つからず、ずっと引きこもりだった俺にとって、ある意味必然的な流れなのだろう。
闇サイトから引き受けた金のための汚い仕事。依頼人からターゲットのIDとパスを聞くだけの簡単なものだ。
夜のネオン街でスマホを片手にアプリを立ち上げる。『iPhoneを探す』のレーダーが刃の行き先を決めた。
九人目はすぐに見つかった。今時のスマホの機能は凄い。
そいつは酔っているのか、全く足取りがおぼつかない。いつものように感情を押し殺して、ターゲットに向かいダッシュする。
生温かい手ごたえを感じた瞬間、貫いた刃に振り返るそいつの顔を見て凍り付いた。
「なぜだ?」
父の瞳は明らかにそう訴えていた。血に染まりながら震える手で依頼人を慌てて確認した。
母のイニシャルがスマホの画面に淡く光って消えた。