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『未来からの手紙』ブログ小説NO.14

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未来からの手紙

不意に届いた一通の手紙。

 

「あれ?  差出人は私?」

 

何かの間違いだろう。宛先の所に自分の住所を書くなんて私も相当疲れているみたい。大きなため息を一つ吐き、ハサミで封を切った。

 

「え?」

それは紛れもなく私からの手紙だった。一週間後の私が、私宛に手紙を書いているのだ。


自分にこの先どんな未来が待っているのか、その手紙は教えてくれた。


手紙の内容は私の日々に忠実に再現され、読むのが楽しみになった。そして何よりも自分の未来を知っているということの安心感は何ものにも変えがたい。

 

数ヶ月後。楽しみにポストを開ければ、私からまた一通の手紙。いつもと違う便箋の色に新鮮さを覚えた。

 

『ずっと頑張ってきた試験に落ちた。もう未来が見えないよ』


手紙にはその二行だけ。

 

私は泣いた。小さな頃、母を病気で亡くしてからずっと夢だった看護師になるための試験に来週私は落ちるのだ。

 

信じられなかった。一生分の涙を流したかもしれない。二日間ずっとベッドで泣いているだけだった。

 

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久しぶりに爽やかな朝日を感じ、私は外に飛び出した。

 

もういい、やるだけやってみよう。私はいつもの自分では絶対にしない行動をたくさん取ることに決めた。

 

色んな人に会いに行き、色んな人に感謝して周る。もちろん隙間時間で勉強も必死にやった。お母さんのお墓も綺麗にして花束を飾った。父を温泉旅行に連れて行くと、今まで聞けなかった父の思いが聞けた。

 

私にはこの一週間で見えないものがたくさん見えた。約束されない未来も悪くない。

 

そして迎えた合格発表の当日。

 

見上げる掲示板が日の光で眩しい。

 

涙は未来を変えた。それっきり、手紙は私宛に来なくなった。

 

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