命の値段
「本当に不幸だとしか言いようもありませんが二匹ともかなり特殊な難病です。保険の適用外なので、もしオペをするとなると数百万円はどこの動物病院でもかかるかと…」
優しそうな医師から告げられた厳しい現実。問われる命の値段。
この子たちは姉妹のいない娘が大切にしてきた命だ。毎日散歩をし、エサを与え、ブラッシングする姿を誰よりも私が見ている。
ダンボールに捨てられていた命は今では娘の大切な姉妹になってくれた。
娘が持ち歩いているアルバムの写真が懐かしい。
「ねぇママ、どうしたの?助かるよね?」
娘の視線があまりにも痛かった。将来の娘の学費などを考えると、数百万円というお金が簡単に作れるはずがなかった。
私はうつむき両手で顔を押さえる。嗚咽とともに思わず涙が溢れた。
帰ったらこの子たちと娘に謝ろう。何度も何度も頭を下げよう。許してもらえるまで謝るしかない。
壁に掛けられた時計が閉院の20時を告げる。これ以上、病院にも無理は言えない。
そう思い、医師に頭を下げた瞬間。
「たった今、タイムセールになりました。もう開院時間ではないので価格も自由に決められる。今なら、そうですね。95%オフです。どうですか?」
医師が娘の頭を撫でながら私にそう言った。
神様がここにいた。