読むサラダ〜140字小説家の挑戦〜

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『幸せの定義』ブログ小説NO.16

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幸せの定義

久しぶりのおばあちゃんの家。仕事が少し落ち着く夏の終わりに私はおばあちゃんの顔を見にくる。

 

縁側の日差しが相変わらず気持ちいい。

 

近所の猫もそれを知ってか、おばあちゃんの縁側で勝手にゴロゴロと寝転がる。おばあちゃんはそれを見て微笑むだけだ。追い払うこともしない。

 

私はおばあちゃんにサプライズを用意していた。昇任で増えたボーナスを人のために使おうと決めていた。

「おばあちゃん、このチラシ見て。八十歳のお祝いにどう?」

 

『天国に一番近い島』、『最後の楽園』、『至高の癒しを求めて』。その島は贅沢なキャッキコピーが飛び交う今流行りの無人島。

 

「いいねぇ、そんな旅ができたら嬉しいねぇ」


高齢であることも気になって散々迷ったけれど、死ぬ前に一度くらいはと、おばあちゃんに旅を贈った。


島の美しい景色はは日頃の仕事を忘れさせてくれた。耳を澄ませば波の音と鳥のさえずり。都会の喧騒はその存在すら忘れてしまう。

 

時が止まり、眠気が心地よく私を襲う。そんな時、横で海を眺めながらおばあちゃんが私にぽつりとこぼした。

 

「家に居る時と同じくらい幸せだね。最高だねぇ」


あぁ、幸せは贅沢や環境じゃないんだと、今更ながらおばあちゃんに気付かされた。

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