100歳
今日はおばあちゃんの100歳の誕生日。
ようやく二十歳になった私ですら、これまで生きてきてたくさんの出来事があった。おばあちゃんはその五倍。凄い。
戦争を経験し、出産し、田畑を頑張り、おじいちゃんを失い、きっとその人生はシワの数以上に様々な幸福と苦難に満ち溢れたものだっただろう。
私たちは夕食が終わり、いつものように和室にケーキを用意する。70歳を超えた頃からケーキにロウソクを指すのをやめたっけ。
でも今日は特別。テーブルに100個のロウソクを並べた。
「おばあちゃん、OK。さぁ和室に座って」
「あら、いつもありがとう」
ゆっくりと腰を下ろすおばあちゃんを家族が見守る。
「それじゃあ、今からおばあちゃんの誕生日会を始めます。今日は100歳を記念して、これまでの感謝の気持ちを一つ言う度に一本ずつロウソクを消していこう」
家族7人でありがとうを重ねていく。
「私に手料理を教えてくれて、ありがとうございます」とお母さん。
灯りが一つ消えた。
「戦時中、よう家を守ってくれたな、母さん」とお父さん。
灯りが一つ消えた。
「私はいつも怒られたらおばあちゃんの部屋に隠れてたっけ。ありがとう」と私から。
私がふっと灯りを一つ消した。
99本までみんなで順番に灯りを消した時、
「もう思い残す事ないよ」
そう言って零れたおばあちゃんの涙で最後の一本の灯りが消えた。