選択
長く平凡だった人生。
特にハイライトはなく、普通に生きて、普通にこの世を去った。
子供たちには葬式で語ることがないという辛い思いをさせたが、波乱万丈が全てだと思っていない私にとって前世はとても満足のいくものだった。
人生をやり遂げ、今久しぶりに黄泉への道を歩く。
この道では前世で人生をどう終えたのかは問われない。人生に満足した人も志半ばで終えた人も平等に色の無い世界をただひたすら進む。
また命を宿したければ、それは本人の自由だ。全ては自分が選択する。
「次はどんな旅にする?」
道すがら老人が私に尋ねた。
「もう人間は十分楽しんだからね。鳥にでもなるよ」
その選択が正解なのか?
それはやってみなくちゃ誰にも分からない。