擬態する部族
少女はブライト・ゴールドの塗料を小指の先にちょんと乗せると眉の上に引いた。
透き通る青空を見上げる。風が吹き、塗料を優しく乾かした。
少女はそのまま木陰でチーターへと姿を変えると、大地を駆け回った。流れる景色に少女は酔いしれた。まるで風を味方に付けたようだった。
効果が切れると少女は微笑みながら肩で息をする。さすがにチーターは5分ともたなかった。
今度は小指にオリオン・ブルーの塗料を取った。蒼い蝶になって空を舞うことができると思うと笑みが溢れた。
日が暮れるのをじっと待つ。蒼い羽が月の光を受けて淡く光る。少女は自分の飛んだ軌跡が夜空に描かれる瞬間が好きだった。
「明日は何色にしようかな?」
声の先にはいつも族長の優しい眼差しがあった。
族長は擬態する少数部族の未来をいつまでも見守っている。