読むサラダ〜140字小説家の挑戦〜

140字小説家✒︎『Twitter novelist』による新しい文学への挑戦記。文字を使って様々な文学への可能性を追求します。一緒に作品を作りませんか?

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『夜市』ブログ小説NO.22

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夜市

静かな森で人魂が淡く青白い光で揺れている。怪鳥の囀りがさらに夜を深めた。


ここは夜市。

そう、絶対に立ち入ってはいけない場所だ。

 

何かと引き換えに、なんでも手に入れられる場所。僕はランタンを片手にここまでさまよってきた。

 

いつの間にか乾いた涙の跡が分からなくなるくらい、汗をかいていた。

 

姉を救いたい。幼い頃からずっと僕の面倒を見てくれた唯一の家族を。


しばらく夜市を歩くと、三つ目の蛙が砂時計を売っているのが目に飛び込んだ。

 

『寿命屋』

壊れかけの看板にそう書いてあった。

 

「ここだ」

「なんだ坊主。命を買うのか?高いぞ」

「あぁ。僕が出せるものならなんでも出すよ」

 

三つ目の蛙は「こいつは気に入った」と嗤った。


迷いはなかった。

 

僕は両目の視力を失い、姉の寿命を買った。これでいいんだ。

 

夜市から下界に戻されると、懐かしい花の香りがした。姉さんのとても好きな花。

 

光は失ったけれど、心に灯った希望に僕は嬉しくなった。

 

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