音を奏でる島
ここは音を奏でる島。
私たちだけの民族が暮らす島だ。
生まれた時から周りに楽器が溢れ、私たちは音楽と共に生きていく。それは呼吸することと同じくらい自然なこと。
そんなこの島の成人式は少し変わってる。
「さぁ、これらの中から一つを選びなさい」
島の族長が私の周りに12種の楽器を並べた。
鍵盤が3段あるピアノに弓を馬の尾で仕立てたバイオリン、360度に複雑な穴の空いたフルートに水を入れて弾くアコーディオン。身体の周りを複数段で取り囲むドラムや12弦もあるギターたち。
どの楽器も私の人生を支えてくれた大切なものだった。
でもようやく一つを極める時が来た。それがこの島で大人になるということ。
私は迷わず12弦あるギターを手に取った。
このギターなら世界にないコードを奏でることができる。私だけのオリジナルギターでいつか世界に音楽を届けたい。