変わらぬもの
「お前に謝らなければならないことがあるんだ」
「何?気持ち悪いな、父さんがそんなにあらたまって」
僕は明日から一人で生活するために異国に旅立つ。
母親がいない中、父さんは本当に僕を頑張って育ててくれた。僕が酷い態度をとった時には厳しく叱り、頑張った時には精一杯褒めてくれたんだ。
そんな世話になった父としばらくできない二人きりの食事。
それは父から言い出したことだった。久しぶりにゆっくり話しながら食事でもしないかって。
確かに最近僕は大学にバイトにサークルに忙しかった。家に帰れば眠っている父の姿を横目に見るくらい。
でも一度だって感謝を忘れたことはない。
「この身体を見てほしい。実は俺、AIなんだ。ずっとお前に言えなかった。本当に申し訳ない」
食事が終わり立ち上がる父。
シャツからは機械が本当に見えていた。驚いた瞬間、これまでの楽しかった父との思い出が一気に蘇ってきたんだ。
「父さんそんなことか。父さんへの感謝はそんな事じゃ揺るがないよ。これからもよろしくね」
きっと機能としてないはずの涙を父はこの時初めて流した。