白と黒
満月が二人の術師を見守る。闇が深まり、怪鳥がけたたましく鳴いた。
白と黒の術師は目元だけ晒し、互いを威圧している。交錯する視線がお互いの体を縛り付け、命のやり取りを慎重にさせた。
空気が張り詰め、風が運んできた木の葉をその圧で真っ二つに割った。
それを合図に黒の術師が先に動く。
素早く五芒星を夜空に描くと、黒い雨を降らした。触れれば即死。
無数の雨粒は容赦なく、白の術師に降りかかる。
「殺った」
黒の術師はそう思った。
ーー刹那。
白の術師が夜霧へと変わる。黒い雨は標的を失い、虚しく地を叩いた。
黒の術師が気付いた時にはもう遅い。白の術師の吐息を耳元で感じ、闇へと落ちていった。