読むサラダ〜140字小説家の挑戦〜

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『夜喰虫』ブログ小説NO.39

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夜喰虫

蝉が夏を奏でる。

 

そよ風に呼応するように風鈴の音が後を追う。

 

今も昔も変わらない日本の夏の風景。

 

風呂上がりに家族でスイカをかじる。それが一番の楽しみだった夏の夜。

 

「昔はね、夏といえば蚊やハエに悩まされたものよ」

母が聞いたことのない虫の名前を口にした。僕はスイカの種をスプーンでよけながら母に聞く。

 

「何それ?聞いたことないや」

 

今から百年後の日本。

 

ついに人類は邪魔な虫を科学技術により根絶した。夏に刺された蚊の跡に悩むことも、腐敗した食品にハエが飛び回ることもなくなっていた。

 

「母さん!!  窓の外がおかしい!」

もうすぐ深夜だというのに、突然我が家にスポットライトがあたったように外が明るくなった。目を細めて網戸越しに景色を見る。

 

「何?え?嘘…」

 

根絶された虫たちは黙っていなかった。

 

『夜喰虫ーよるくいむしー』

 

大量発生したそいつらは、身体中から光を放ち、日本から夜を奪った。その様子は、まるで闇を食べ尽くすかの様だった。

 

僕が過ごした最後の夏の夜。夜は暗いものだという思い出は、このあと遠い過去の記憶となる。

 

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